平成13年4月6日更新  Iさんの原稿

1) 自分が大学院生活をおくる過程で、学内学外を問わず、学習・研究しているテーマについて簡潔に記述する。
・学内において
学内では主に人工金融市場に関する研究に重点を置いている。何故、人工金融市場について研究を進めているのかというと、完全合理性など非現実的な仮定をする経済学的なアプローチに疑問を持ったからである。
例えば単純な株価の期待値を計算するにあたって、投資家に対して完全合理性を仮定する。これにより株価の期待値は一意に決定されるが、その決定が現実の株価の期待値形成に対して用いることが出来るアプローチであるかというと、それは間違いであり、もっと限定合理的な投資家のアプローチが必要である。また、東京証券市場にも存在する資産価格の変動を安定化させるような制度に対して、その実際の効力を確かめることは簡単には出来ない。とはいえ、事が起こってから失敗したと嘆くようなことがあっては、実体経済に与える影響が大き過ぎる。そのような制度は机上で論じても、その効果は測る事ができない。議論不可能であった事に対してシュミレーションなどにより観察・分析が可能になることは、「資産価格の安定化をはかる」という制度の是非を測る研究分野なのである。

→学外
学外では主に全ての物事を多角的にかつ論理的に分析することに重点を置いている。そのためには分野を限ることなく、多岐に渡った分野の知識を得ることが重要と考える。理系に限らず文系の分野である経済的な知識や歴史などの知識を怠ることなく収集することを心がけている。また、収集することによって知識を蓄積するだけでなく、それを論理的に系統立てて用いるようにとも心がけている。
さらに人格面においては、祖母に言われた言葉「信用される人間になりなさい」これを常に考え、責任感と思いやりのある行動を取るように心がけている。大学1年から5年間塾の講師を続けてきたが、そのための実践の場所として塾の講師は格好の場所であると考える。さほど大手塾ではないので、生徒は人格面において信用できるか出来ないかで講師を判断する事が多いと考えられる。そのような場所で信用される位置に居る様に常に心がけ、行動するようにしている。

2) 企業に投資する上でのリスクとは何か記述する。ハイリスク・ハイリターンという言葉がありますが、企業への投資に関連付けて言葉の意味を説明する。

現在預貯金のみで余剰資産を運用している人に、リスク資産である株式を保有する様に説得するためのロジックを考えてください。
現在日本人の余剰資産は、依然として株式や債権などのリスク資産への運用を避け銀行預金や郵便貯金などに眠ったままである。その原因としては、やはりリスク資産と呼ばれる所以であるリスクを伴うからである。あまり金融に精通していなく、株式などによって資金を運用したことのないような個人投資家にとっては、まさに「元本保証がない」という事がリスク(危険度)となると考えられる。
この点から個人投資家に株式の運用を説明する場合、ハイリスク・ハイリターン的発想ではなく、ローリスク・ローリターン的発想で説明し、いかにリスクを少なく投資できるかを中心に説明するべきである。具体的な案件としては1.長期運用、2.分散投資、3.アセットアロケーションを挙げるのが良いと思われる。
1の長期運用に関しては、物価は長期的に見れば必ず上昇する。昭和60年度から平成11年度までの15年間の消費者物価指数総合の上昇率は1.17%というように長期的には上昇するのである。例にもれなく株式も物であり、長期的に見れば上昇する。
例えば、価格の安定度から考えて東京ガスを見てみると(月時終値ベース)、85年12月から2000年12月までの15年間の間に304円から338円、つまり17.77%の上昇率を見せている。また、野村證券のような株でも90/12月から2000/12月までの10年間に15.82%の上昇率を見せている。このような点を踏まえて、長期的に見たときの運用の安定性を説けばよいと考える。また、配当を含めた利益があることを忘れずに付け加えることが重要である。
2の分散投資に関しては、「資産を株式だけでなく、債権などの資産タイプ別に分散する」、「日本国内だけでなく、海外への証券に分散する」、「証券の銘柄別に分散する」主にこの三つの分散手段が有効であることを説明する。分散の判断手法としては、相互相関係数などのような個人投資家自身でも分析できるような簡略な、統計手法を用いて説明すると良いと考える。最近の手法としてはバリューアットリスクなどの高等手段が存在するが、一般に知られていないものはなるべく避けるようにしたい。また、売買のタイミングを分散し、「一定期間内に一定額で取引するドルコスト平均法のような分散手法も取引時の価格変動リスク削減に役立つ」というようなことも、挙げれば良いのではないかと思う。
最後に3.アセット・アロケーションである。せっかく良い分散投資を実現したにもかかわらず、資産の配分を間違えれば意味が無くなってしまう。長期運用と分散投資を総合的に生かすためには、資産配分が重要であり、上手なポートフォリオの組み方を説明することが大切であると考える。
以上のように三つの手段を用いて建設的に説明すれば良いと考えるが、最後に1つ忘れてはいけないのが「株を持つ」ということである。銀行預金や郵便貯金にしたって一定の元本に対しほぼ一定の金利しかつかず、テレビを見て金利が少し上がったといって喜ぶことなんてまずない。しかし、株主になれば毎日のスリリングな変動に対して一喜一憂でき、かつ株価と実体経済は連動すると考えれば経済にも興味が沸き、毎日のテレビを楽しみに見られる。また、自分の資産が株式に投資することによって経済に影響していることの喜びを説明したら効果的であると考える。